石材店・石・建築石材『全国建築石材工業会』
 


汚れの種類とその原因
石材の汚れを防ぐには
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(2)通気性のない裏面処理材の問題点
JASS9で取りトげられている裏面処理材は、主として防水材であり、エポキシ系や合成ゴム系のものである。これらの材料は通気性に乏しく、特に水分を 多く含んだ床コンクリートの上に裏面処理した石材を張ると、水分がなかなか蒸発せずに目地に集中する。そのため、石材の小口に防水材を塗布していないと、そこから石材中に水が浸入して、目地廻りだけ濡れ色になったり、エフロレッセンスが出たりする。具体的には、工期が短い場合、型枠がデッキプレートの場合、 土間コンクリートの場合などで、床コンクリートの水分がなかなか抜けず、この現象が起きやすい。こうした場合、後に述べる浸透型吸水防止剤が有効ではないかと考える。
 

(3)裏面処理の難しさ
裏面処理に利用する材料、たとえばエポキシ樹脂は硬化するのに12時間程度かかる。また、石材を立てて塗るにしろ水平に寝かせて塗るにしろ、かなりの面積を必要とするし、エポキシ樹脂は流動性がよいので流れて表面を汚しかねない。 しかも、現場で塗るのは難しいので、工場で塗るか、現場近くに作業場を見付けなくてはならない。先に述べたように、エポキシ樹脂は小口にも塗る必要がある。小口と表面とどこで塗り分けるのか、ペンキ屋さんでも難しい仕事である。また、丁寧に小□に塗ったものの、現場では小口に穴をあけることもあるし、切断することもある その部分は無防備となるので現場補修塗 りが必要だが、大変な作業である。


(4)浸透型吸水防止剤
今まで打放しコンクリートに用いられていたアルコキシシラン系の携水剤が 、小材にも適用できるよう改良されている。その1つ(商品名「ストーン.スピリッツ」)を試験したところ、次のような結果を得た。
・石材に含浸しやすい
・石材の色調、質感を大幅に変えない(もちろん、石種により多少の変化はある)
・石材の吸水率を大幅に小さくし、吸水防止効果が大きい
・石材に含浸させてもモルタルやシーリ ングの接着力に影響しない 、
石材の吸水率が大幅に改善されると、 たとえ裏面から水が回っても、あるいは雨に打たれても濡れ色になりにくく、エフロレッセンスも出にくい。表面に汚れた水が作用しても石材に染み込まないので汚れないなど、ここまでに述べた汚れ防止策が不完全でも、大きな効果が期待される。(「ドライ・ペネート工法」。図2
図2 浸透型吸水防止剤による汚れの処置方法

浸透型暇水防止剤(ストーン・スピリッツ)とは?
主成分はシリコン化合物で、塗右すると石の細孔内に浸透して掻水層を形成する。これにより、水の浸入を防止すると同時に、石材内部に ある水分の蒸発を助ける。施工前の石材表面に塗り、濡れ色・エフロレッセンス・カビのほか、白大理石の黄変や接着剤攪拌不良による変色、吸水による錆などを防ぐ効果がある。裏面にも塗るとさらに効果大。また、施工後の塗布も可能。ただし、塗布前に石材をしっかり乾燥させておくことが必要。石が乾燥することにより、吸水防止剤の浸透が十分になるためである。 

参考文献:建築知識9月号 特集:まるごと石辞典