コストを下げるコツ

(1)材料・仕上げの変更

コストを下げるために材料を変更する場合、同グレードのほかの石種を探すとよい。石材業者はみな石を多量に在庫している。根気よく探せば廉価で仕入れた スラブ板などがある。前述の要領でダメなら、石の色を汎用的な材料であるピンク系や白系の御影石に変更することを勧める。要は、設計段階ではなるべく色が濃くて汎用的な石種を選定すると、後のコストの調整がしやすい。  

仕上げの変更は、デザインが変わってしまうので難しい。また、大理石は本磨き以外は考えられない。御影石は仕上げが多様だが、磨き以外の仕上げはかえって高くなる。ジェットバーナー仕上げの石は厚みを確保するので割高になる。  

筆者が提案したいのは、小面の仕上げの省略である。壁石や柱石、その他出隅には留め以外には必ず小面仕上げがある。この仕上げを切り放し面でよいとなったら、相当安上がりになる。一般に小面は表面と同じ仕上げにするが、切断機で切った合口は水磨き程度に仕上がってるので、納まりをうまく考えれば違和感はないと思う。これで総予算の5%くらいコストが下がる。

床石の場合は、使用する場所によって仕上げを考える必要がある。不特定多数の人が出入りする場所、たとえば駅舎などの床、階段などの仕上げは、絶対に滑らない仕上げにすべきである。このような建物の床、階段のコストを下げるには、人の歩く所は小叩きやバーナーなどの仕上げとし、その他の部位は、たとえば階段蹴込石は磨石を使ってもよいし、壁際などは仕上げを落としてもよい。

現在床の荒い仕上げは、①小叩き仕上げ、②ビシャン仕上げ、③シェットバー ナー仕上げ、④ウオータージェット仕上げ、⑤粗磨き仕上げ、⑥挽面肌仕上げの順に安くなる。値段の差は①を100する と⑥は75%くらいに、下がると思うので、検討してほしい。

(2)納まりの変更

石工事の場合、納まりを変更することによって単価が下がり、しかも工期短縮や耐久性の増大など付加価値を付けることもできる。たとえば、前述した幅木石である。出幅木より入幅木の方が安いのは、天端の小面づくりがない、面取りがない、逃げがきく、石厚は薄くてすむ、壁とのチリは多少不揃いでも気にならないなどが要因となっている。

役物の窓台石の納まりも、図のように雨返しが別石で貼り合わせて作成してあれば、1枚ものの窓台石の半分くらいの単価になる。要は平板を主に小面や切欠き、溝、穴彫り、無駄な呑込み関係、裏ハツりなどを極力少なくすることである。また、曲線とテーパーを乱用することはコストを押し上げる要因となる。

参考文献:建築知識9月号 特集:まるごと石辞典