浴室

【どんな石が使えるか】

浴室は人が一番くつろぐところである。したがって、施主の嗜好にあってさえいればどんな石をつかっても構わない。ただし、大理石は水に弱く、本来不向きである。このことをよく説明したうえで、それでも施主が望むならそれもよいと思う。壁は、床や浴槽よりは多少水の影響も少ないので、水がよくかかるシャワーやカラン廻りだけアクセントの意味も込めて御影石とし、ほかは大理石を検討してみるのもよい。こうした観点から石の性質や特性を表にまとめた。

【浴室の工法の基本】

浴室床も基本的には一般床と同じだ。違うのは一般床より狭い場所が多く水勾配も多くとる必要がある点だ。狭い範囲でグレーチングとか排水穴の取合いも出てくるので、一般床より石の大きさを小さくした方が無難である。
浴室の壁もシャワーや水栓金具などの取合いが多い。取付け箇所を考慮して割付けを決めないと、目地付近に水栓金具がきてしまう。場合によっては、石に丸く穴をあけられずにU字型にあけるようになり、非常に悪い納まりになる。
浴室の石工事で一番やっかいなのが浴槽だ。個人的な経験では、浴槽を石でつくるとかなりの確率で水が漏る。また、石は暖まりにくく冷めにくいので、温泉や24時間風呂のようなお湯が入りっぱなしの風呂には向いているが、小さな浴槽で使うたびにお湯を抜くような使い方には向いていない。
既製品の浴槽を使用した場合、洗い場からの立上がりや浴槽の回りに石を使うことがある。この場合、浴槽の回りの水勾配が問題になる。水平にするのが見た目には一番よいが、浴槽から溢れたお湯が回りに溜まるので不衛生だ。あまり大きく水勾配をとっても浴槽との取合いがうまくない。理想は浴槽自体を洗い場側に全体で約5mm傾けて据え付けることである。そうすれば水勾配もとれ、浴槽のお湯も壁側に流れずに石との取合いもきれいに納まる。

【浴室の工法のチェックポイント】

防水は石には頼れないので、防水層を下地にする。防水層が機能しなくなる可能性を考慮すると、1階以外には浴室をつくるのは避けた方が無難だ。
水勾配が、不足すると水が溜まる部分ができるし、とりすぎると見た目も悪いし使用感も損なわれる。それでも洗い場の床は1/50は最低とりたい。表面の汚れは石種によってかなり異なる。凝灰岩のように吸水率の高い石はカビが生えやすい。日常こまめに手入れするのが一番だが、浴室用除湿器の設置も 1つの対策である。また、目地の汚れやカビは、石種に関係なく問題になる。シール目地の場合、汚れよりカビが生えることが多い。またモルタル系の目地の場合、目地自体の吸水率が高いので、こまめな手入れしかないようだ。
洗い場床の滑り防止対策は大変重要である。以下を参考に石を選んでほしい。壁際は特に汚れやすいので100㎜幅程度のボーダーを御影石などの本磨きで回すとよい。この程度の幅のボーダーなら、それほど足を取られることもない。

石種と仕上げ耐水性 肌触り 滑りにくさ
御影石(本磨き) ◎ ×
御影石(バーナー)× ○ ◎
大理石(本磨き)× ◎ ×
ライムストーン× ○ △
砂岩(水磨き)× ◎ ◎
砂岩(割肌)× △ ◎
石英岩(割肌)× △ ◎
天然スレート(割肌)× △ ◎
鉄平石(割肌)× △ ◎
鉄平石(本磨き) ◎ ×
凝灰石(水磨き)× ◎ ◎
注 凝灰岩は軟質ではなく硬質凝灰岩(十和田石など)  凡例 ◎最適 ○適 △可 ×不可
参考文献:建築知識9月号 特集:まるごと石辞典